「私、やり残したことがたくさんあるのに……」

拾遺編: 隠された品


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 冬の空気に冷え切った手へ、黒い液体をたたえた安物のマグカップが温度を伝えてきた。
 まったく、早起きだけは得意でない。採光にあまり気を遣っていない事務所の窓から低く射す日光も、すきま風に感じる朝の寒気も、俺をなかなか微睡みから連れ出す役には立たなかった。
 油断をすれば舟を漕ごうとする自分の首から上を、俺はようやく奮い立たせる。
 この時刻の儀式として新聞に視線を落とすと、日付は一二月二四日とあるようだった。
 二〇〇二年という年も、もう終わりが近い。娘の――エミくらいの齢の連中は、この時期クリスマスとやらで騒がしくなるのだろうな。そんなことをぼやっと考えた。

「和夫さん。ちょっと、星野和夫さん」
 顔を上げれば、もう目の前には放送局から来た女がいる。早川秋子だ。彼女の声のトーンがあからさまに上がるのと反して、俺の頭はだらしなく机へと落ち転んでいった。
「ちょっと。もう、本当に聞いているの」
「そう怒らなくていい。ちゃんと聞いてるから」
「嘘をおっしゃい。だったら、私が話したことを言ってみてくださる」
「聞いてるが、理解をしていないだけだ」
「あきれた。相変わらずね」
「すまないが、コーヒーをもう一杯くれないか」
 あきれられたが、仕方がない。自動車に燃料が必要なように、朝早くに俺を動かすためには数杯の濃いコーヒーが不可欠なのだ。
「ご自分でお淹れなさい。私、もう四杯はお淹れしたじゃないの」
「そうだったか」
 そりゃすまなかった。
「今日はあなたにコーヒーを汲みに来たんじゃありませんからね。まったくもう、せっかくお仕事をお持ちしたらこれなんだから」
 なるほど秋子の言う通り、確かに四杯も飲んだというだけあって、流石に目が冴えてきたような気もする。やはり朝はコーヒーに限るのだ。
 目を閉じて机に突っ伏しながらでも、他の感覚を研ぎ澄ますことができる。
 もう少し、しぶとく微睡みを続けようかとも思ったが、どうやらそうもいかない雰囲気を俺は秋子の背後から感じた。これは……。
「秋子」
「何ですか。いい加減に、人の話をちゃんと聞いて……」

 机の下には、銀の剣を備えてある。顔を上げる動作と同時に、俺はそれを引っ掴んだ。
 秋子の背後に炎が爆ぜた、瞬間だった。

「えっ……!」
「危ない、伏せろ」
 そうは言ったが、俺の助言は一足遅い。秋子の体が、もんどりうって倒れた。
 おっ取り刀で、机の上に駆け上る。
 秋子の背後に感じられた不吉な気配から、数個の火の玉が俺へ向けて発せられた。反射的に剣を振るい、飛来する火球の一個を叩き落とした。
 俺を外した流れ弾はあらぬ方向へ散る。安物だが部屋に事務所の機能を与えている家財に、火は容赦なく踊りかかり、いくつかのキャンプファイアを作った。
 机を踏み台に、俺は秋子の元へと被さるように跳んだ。同時に右手の剣を、凶悪な気配のするほうに向けて振り下ろす。手応えはなかった。

 敵の炎が、不意に掻き消えるように消滅した。攻撃が一旦止んだということだろうか。
 焚きしめたと表現するにはいささか風情のなさすぎる、きな臭く鼻をつく煙が部屋に満ちみちていることに気が付いた。
 電気が落ちたか。現代的な事務所には不自然なほどの暗闇が、視界を覆い尽くしていた。煙が部屋に立ち籠めているはずなのに、スプリンクラーも何も作動しない。なるほど、電気というやつは、霊的な現象とどうやら相性が悪いものらしい。
 凶々しい静寂が、ほどなく訪れた。
 以前、これと似た戦場をくぐってきたことがある。間宮邸での忌まわしい戦いの記憶が、突然に脳裏に呼び覚まされた。
 敵の波状攻撃が危惧されたが、機会を窺っているのか、不気味な休止が続いている。心配は不意打ちを受けた秋子だ。

「傷は」
「平気よ。何とか、かわしたわ」
 なるほど。
 もんどりうって倒れたように見えたのは、俺の思い違いらしい。秋子は秋子で、この刺客の存在に気づいていたのだ。秋子もまた、俺とともに死の淵を渡り、霊的存在との戦闘経験を積んでいる。
 その秋子が平気と言うなら、真実、平気なのだ。俺はにわかに、信頼できる仲間の存在を感じた。
「こいつは何者だ」
 質問を変える。
「私が訊きたいわ」
「尾けられてたんだな」
「みたいね」
「心当たりはあるのか」
 そう訊くや、秋子は急に鼻白んでみせた。
「あるに決まってるじゃありませんか」
「は?」
 俺はよほど素っ頓狂な声を上げたのか、秋子を一段とあきれさせる結果となった。
「あきれた。人の話を聞いていてくださいな。今回のクライアントさんからは、他でもない間宮邸に関してお話を伺ってるのよ」
 そうだったのか。……などとはとても言えたものじゃないから、別の質問をする。
「三つ叉の矛は持ってるか」
「そんなの持って街を歩けるわけ、ないでしょう」
「だったら薬箱は」
「まあ、ありますけど」
「なら安心して、呪いにでも何にでも掛かれるな」

 俺は手に持っていた古い銀製の剣を構え直した。間宮邸から拾い出してきたもので、霊魂の類にも有効打を与える不思議な長剣だ。
 刀身には、何らかのまじないの言葉が彫られている。おそらく、幽霊を祓う神通力のようなものがこの文字列に備わっているのだろうが、俺に解読できるような代物では当然、ない。
 剣術の奥義も呪術の神秘も存じない俺だが、実際に魔物をこの手で斃してきた自分の経験だけは、大いに信頼できた。

「戦うんですか」
 秋子が当然のことを訊いてきたので、俺も当然の答えを返す。
「決まってるさ」
 経験上、こいつらは必ず相手の前に姿を顕して襲い掛かってくるはずなのだ。それが証拠に、俺たちからの距離が離れれば、敵は自慢の炎を燃やし続けることさえできないではないか――もしできるのなら、この事務所はとっくに火災で焼け陥ちているはずだから。
 敵が俺たちの命を狙う限り、必ず今、攻撃はかけてくる。一瞬の交錯が勝負だ。
 俺は秋子の背後を警戒する。秋子は俺の背後を警戒する。どちらから言い出すともなく、二人は即興的な陣形を組んでいた。

「なあ、秋子。俺たち、間宮邸でもこんなに気が合ってたっけな」
「それはないわ」
 秋子は、極めてつっけんどんに答えた。
「和夫さん、ずっとアスカちゃんやエミちゃんと一緒だったじゃないですか……」
 ああ、言われてみれば、確かにそうだったかも知れない。
「秋子、ひとつだけ、どうでもいい質問をしていいかい」
「この非常時に、何ですか」
「妬いてる?」
 炎のような一撃が俺の体を掠めた。幸いにも秋子からではなかった。

 火線は事務所の宙空から伸びてきた。身をよじってかわした俺の横に積まれていた、古新聞の束が焼け焦げた。
 次の瞬間そこに浮かんでいたのは、紅蓮の炎に包まれてという陳腐な形容がぴったりの霊魂だった。煌々と燃えさかる人間の顔のようなもの、それもとびっきり醜く苦痛に歪んだ顔をした化け物。
《……ラープサークロイヒレームラーザートラーブ……》
 赤々と燃える顔がその口から、地獄の釜がふつふつと煮えたぎるようなと言おうか、神をも呪わんばかりのと言おうか、そんな調子のくぐもった音声を響かせた。ちょうどガラス板をこすりあわせるような、聞いているだけで精神に失調をきたしかねない声だ。
 俺は努めてそれを聞かないようにしながら、剣を掲げて跳び上がる。敵の存在する方向へ、力任せに刃を振り抜く。
 顔面は空中を素速く舞って回避を試みたが、俺の切っ先はそれ以上に速い。
 人間で言えば頬骨の辺りに、白銀色の刀身は確かに食い込んだ。

《……ウンテルアルテムトイフリシェムフェルトラーク……》
「まだ元気なのか、こいつ」
 残念ながら、人魂の呪詛の声も宙を飛ぶ勢いも、まだもってご健在の様子だ。
 間髪を入れず、俺は第二撃の構えをとった。
《……ヴュンシェディールトーテオーデル……》
「さっきからこれ、何のおまじないよ?」
「知るもんか」
 知る前に斬り斃してしまいたいものだ。
 屈めた脚をバネに、俺は再び跳びかかる。宙空から一気に畳み掛けて剣を振り下ろし、勝利をものにする……。
《……ツェルシュテールン》

 ことはできなかった。

 敵のまじないの言葉が、俺の斬撃の一瞬前に完結したようだ。顔面が最後の音節を吐いた刹那、その炎から一際眩しい閃光が放たれた。視神経を焼き切らんばかりのその光を、俺はまともに視覚へと捉えてしまう。
 忽然、全身の筋肉が空中で奇妙に緊張するのが感じられた。俺は重力のなすまま、木偶人形のように床へ情けなく落ち転んでしまう。薄汚れた床に横たわったそのままの姿勢、指一本たりとも動かすことはできない。
 金縛り、というやつか。
(くそっ、ふざけるな……!)
「和夫さん!」

 霊魂が俺に狙いを定める。得意の火炎弾をよこそうとする様が、閉じない瞼から俺の視界に否応なく入ってくる。
 俺には策はないし、あったとしても実行するための身体が動かない。今さらながら、いささか軽率すぎた自分の戦術を悔いた。まずい。せめて、秋子だけでも、何とか……。
 ……などと悲観するのもまた、軽率がすぎたようだ。
「戦っているのは、和夫さんだけじゃないわよ」

 秋子は事務所の天井に向かって両手をかざしていた。彼女もまた、魔法や呪術が使えるわけでは断じてない。だからその構えは神に近づく儀式でも何でもなく、単なる精神集中のための、彼女なりの段取りにすぎない。
 そして、集中された精神こそ、悪霊を調伏するのに最も効果的な武器なのだ。
 俺たちは、これを心の力と呼んでいる。
 やがて両の掌の上に、心の力の巨塊が形成されたらしい。秋子はその見えざる砲弾を無形の大砲に装填し、宙に浮かぶ禍々しい霊魂めがけてこれを発射する。
「消えなさい!」
 瞬間、悪霊の顔が、驚愕したように見えた。
 秋子のイメージの中には、この霊魂が大いなる心の力に押し潰され、敗退する様が思い描かれていたのであろう。なぜなら事実、その心象の思い描くようになったからだ。

 その顔面をさらなる苦痛に歪めながら、人魂は砂丘が風に崩れるように消滅した。


 俺の金縛りを秋子が手際よく治療してくれた頃、濃霧が晴れ上がって太陽が顔を出すように、光を取り戻した蛍光灯が事務所を照らした。
 同時に、あちこち焼けてしまった部屋の惨状が俺の目の前に露になった。しばらく掃除をしなかったカーテン、ところどころ破れたのを色を塗って誤魔化してあった壁紙、スチールの棚からはみ出した昔の書類、タコ足の電源コード……。部屋の隅に積まれたままだった段ボール箱やら、合板に印刷された木目が剥げかかった水屋なんかも、見るも無惨に燃えていた。
 部屋の闇は晴れ上がったものの、後始末の手間に思いを致すや、俺の気分は一瞬にしてどんよりと曇った。
 せっかく晴れた事務所も、間もなく雨になった。電気が復帰し、部屋に満ちた煙にスプリンクラーが反応したためだ。
 二人は間抜けな濡れ鼠になりながら、会話をせざるをえなかった。
「さあ、俺は目が醒めたぞ。そろそろ仕事の話を始めるか」
「あきれた。外ですればいいでしょう」
 秋子の態度は、冷静だった。
「まあ、そうだ、その通りなんだが。しかしその前に、これ消防署に何て言ったらいいのかな」
「お役所との折衝は、和夫さんのお仕事です」
 秋子の態度は、にべもなかった。



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和夫 「さて、間宮邸絡みの仕事ってのは、一体何だ」
秋子 「ええ、依頼をプリントアウトしてきたわ。これが、それよ」


>送信日: 2002年12月19日(木)19時47分50秒
>性別: 女
>年齢: 17歳
>職業: 高2
>----------------------------------------
>
>FCのスウィートホームの隠しアイテムの「滑車」の場所を教えて下さい!
>二個あるらしいのですが一個も見つけられません。。。
>


秋子 「愛読者ハガキとして、『CyberVampire』編集部に届いていたご依頼ですよ」
和夫 「ほう……」
秋子 「知る人ぞ知る秘密のアイテム、〈かっしゃ〉。さっき間宮邸の悪霊が私たちを狙ったのも、この隠しアイテムのことが外部に漏れるのを恐れてに違いないわ。こういう貴重な品を世間に紹介することって、私たち取材班の使命じゃないかしら。文化的見地から考えても、とっても有意義な調査と……」
和夫 「女の子じゃないかっ!」
秋子 「なっ、何ですか?」
和夫 「依頼人だよ、依頼人! なになに、女・17歳・高2ときたか。妙齢の美少女って言うのかね、ぜひともこの娘とは個人的にこう、ご懇意になりたいもんだな。いいぞいいぞ。こりゃあおじさん、あれだ、依頼人とのロマンスってやつを期待せずにはいられないよなあ。うんうん」
秋子 「……本当、あきれた」
和夫 「しょうがないじゃないか。男の性分だよ」
秋子 「もう。今どきそんな適当な記載、信じる人なんていないわよ」
和夫 「俺だって頭じゃ判っちゃいるよ。でも何て言うのかな、男ってやつは騙されてるんじゃない、騙されたいんだよ。秋子も男心のそこを判ってくれないと困るなあ。この記事の筆者だって未だに彼女いないんだから」
秋子 「はぁ……もう私、知りません」
和夫 「あ、ひょっとして。秋子妬いてる? 高校生に?」
秋子 「和夫さん……心の力による攻撃って、ひとにも効くんですよ……」
和夫 「怖いことを言わないでくれよ」



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「俺たちは上の写真で〈かっしゃ〉を入手してるわけだからなあ」


和夫 「まあ何だ、俺たちは上の写真で〈かっしゃ〉を入手してるわけだからなあ。こいつを記事の本文で紹介しなかったのは、確かにおじさん手落ちもいいとこだ」
秋子 「そうですよ。いつか本文中で『調べたことは徹底的に書く』だなんて、偉そうなことをおっしゃってたじゃないの」
和夫 「それは本当、面目ないよ。いや、でもね、今から調査を再開となると、難題もあるのさ。あのお化け屋敷に、俺たちはまたしても乗り込まないといけない……こいつは、一筋縄ではいかんよ」
秋子 「事務所に保管してる調査資料に、写真がありますでしょう。何のために田口君がカメラを持って行ったんです」
和夫 「そうしたいのは山々だがな、どっこい、事はそう簡単でもないのさ。調査資料なんて、俺にはいちいち耐火金庫にしまっとくような習慣はないからなあ」
秋子 「耐火金庫、ですか」
和夫 「そう。不幸なことには、紙ってのは可燃物だからな。さっきの敵さんの不意打ちでね、綺麗さっぱり焼けちまったってわけさ」
秋子 「やっぱり、私を尾行してきた、あの……」
和夫 「いや、秋子が悪いんじゃあないさ。俺だって、不精をせずに書類くらい整理しとけば良かったんだな」
秋子 「……ごめんなさい」
和夫 「何を謝ることがあるかい。現実世界では何が起こったかというとだな、なんのこたあないセーブデータが消えただけだ」
秋子 「はぁ……」
和夫 「とにかく、もう一ぺん間宮の屋敷に行ってこなきゃならないのだけは確かだな。やれやれだ、また玄関が塞がるシーンからやり直すのか」
秋子 「準備にかからないといけませんね」
和夫 「そうだな」
秋子 「和夫さん。私や、田口君に、アスカちゃん。それにエミちゃんも、ついて行っていいわよね?」
和夫 「ああ。もちろん、頼むよ」



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「というわけで、みんなに集まってもらったんだが」


和夫 「というわけで、みんなに集まってもらったんだが」
田口 「おいおい冗談はよしてくれよ。俺ぁこんな冒険二度とごめんだっつったじゃねえか」
エミ 「秋子さん! はいこれ、ストップウォッチ」
秋子 「ありがとうエミちゃん。じゃ、アスカちゃん、リハ行ってみようか」
アスカ 「さてお茶の間の皆さま。私たちは、今まさに間宮邸に踏み込んだ所です。30年もの間誰一人として足を踏み入れる者のなかったこの屋敷のどこかに、昭和の生んだ幻の天才画家・間宮一郎の残した〈かっしゃ〉が……」
和夫 「見ろ田口、女性軍はやる気満々じゃあないか」
田口 「マジかよ……」
エミ 「クス。お父さんだって、女の子の依頼でもなきゃ本腰入れようなんて絶対思わないくせにさ。男って現金だよねー」
和夫 「何を言うか。30年間誰も入らなかった間宮邸に隠された秘宝を探すんだぞ。こういう貴重な品を世間に紹介することは、我々取材班の使命じゃないか」
秋子 「それ、確か私が言った台詞よ」
田口 「ちょっと待て。30年間足を踏み入れる者がなかったって、前に俺らが入ったばっかりじゃねえか。俺だってマスコミで飯食ってる手前、脚色をするなとは言わねえよ。だが嘘はやめろ」
エミ 「なーんだ。田口さん、そんなの全然大丈夫だよ。ね」
アスカ 「はい。だって、セーブデータが消えておりますから

田口 「……いいのかよ……ジャーナリストって奴が、そんなことでいいのかよ……!」
和夫 「何落ち込んでるんだ田口、行くぞー」



「さあ、ついに『六月・巌窟の章』に辿り着いたぞ」


和夫 「さあ、ついに問題の〈かっしゃ〉のある『六月・巌窟の章』に辿り着いたぞ」
田口 「早ぇよ!」
秋子 「田口君。いいかしら」
田口 「何だよ!」
秋子 「確認しておきたいのだけど、マスメディアの使命というのは、消費者に常に新しい情報を提供してゆくことなのよ。オープニングからこの章までの道のりを、仮に逐一説明したとして。それって、既に本編の攻略編でなされている記述の繰り返しにすぎないわよね? 果たしてそのことに、新しい情報としての意義があるのかどうか……田口君、よく考えてほしいの」
田口 「……はあ、そうスね。これでも筆者は苦労してんですけどね」
エミ 「でもさ、初めてゲームをやる人で、ここまで来れない人はどうしたらいいのかな?」
アスカ 「攻略にお困りの際には、こちらの番組ホームページまでアクセスして参考にしてください」
和夫 「よーし、では張り切って探すとするか。いやあジャーナリストの腕が鳴るなあ。おい田口、撮影は任せたぞ」
田口 「あー、見つかったら呼んでくれよな……俺の面倒事は撮影までなんで……」




エミ 「ねえねえ、お父さんから報告書、もう届いてる?」
秋子 「あらエミちゃん。ええ、この通りよ」


>DATE: 2002年12月25日(水)14時31分55秒
>FROM: "星野 和夫"
>TO: "早川 秋子"
>CC: "田口 亮", "アスカ"
>SUB: 調査報告書
>----------------------------------------
>
> 調査結果を下記の通りご報告いたします。
>
>調査日時: 2002年12月24日
>調査住所: ○○県××郡大字△△ 間宮一郎邸
>調査目的: 〈かっしゃ〉の所在位置の割り出し、画面写真の撮影
>
>〈かっしゃ〉の所在位置:
> 間宮邸内に計2個の存在を確認する。
>
>1. 六月・巌窟の章 燭台の廊下(1)へ続く小部屋
> 小部屋内南東隅、画面には見えず。「しらべる」か「こうかん」を使用のこと。
> 画面写真→<リンク1>
>
>2. 六月・巌窟の章 巌窟の回廊、北東隅
> 北東隅の銅像内。「しらべる」か「こうかん」を使用のこと。
> 画面写真→<リンク2>
>
>〈かっしゃ〉についての判明事項:
> 移動の速さを約1.25倍にする(見た目にはかなり高速に感じられる)。
> カート、もしくは巨大なキックボードのような外見。写真→<リンク3>
>
>以上
>
># みんな協力ありがとう。リフォーム業者が来るまで事務所はどうせ使えないから、
># しばらく臨時休業にして、俺は寝る。
># あ、そうそう。
># 巌窟の回廊なんだが、こういう隠し通路(写真→<リンク4>)もある。
># 〈ハンマー〉で写真の場所を壊したものだ。
># ショートカットと大岩の回避に使えるかも知れないが、
># 大岩は<リンク5>の方法で抜けられるし、敵も出ないから、無意味だよな。
>#
># じゃあ秋子、クライアントの女の子には、くれぐれもよろしく言っておいてくれ。
>


秋子 「うふふ、和夫さん、お疲れさま」
エミ 「クス。上手くいったね、秋子さん」
秋子 「そうね、やっぱり普通にご依頼を持っていくよりも、がぜん張り切ってやって下さったわね」
エミ 「お父さんったら、すっかり怠け癖が身に付いちゃってるんだから。普通の依頼じゃ何だかんだ理由付けて、絶対に腰を上げないもんね。こうやって匿名のミステリアスな女の子って感じで、お父さんの興味を惹いたげないと。あーあ、男ってホント、いろいろ手が掛かるんだからさ」
秋子 「でも、エミちゃん」
エミ 「なーに、秋子さん?」
秋子 「正体を騙るのは、良くないわねえ」
エミ 「ん? 嘘なんて、ひとっこともついてないよ。あたし、17歳の高校生だもん」


- Fin -



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